「女たちの戦場」第九話:まわりは敵だらけ
Love 2017.03.15 UPDATE

「女たちの戦場」第九話:まわりは敵だらけ

片瀬さんの意見に、私はまわりのみんなが怪しく思えてくる。

堂々と宣戦布告してきた亜沙美。身体で男を落とそうとする紗羅。それに、わざとらしい女子力アピールで有坂さんに近づく由依。

だけど、彼女たちだけが有坂さんを狙っているわけじゃないだろうし、私が知らないだけで、他にもいるかもしれない。

そう考えたら、誰が信用できるのか全くわからなくて、私は仕事に集中できなくなっていた。

そして三日後、私と有坂さんは庶務サポート課に異動となった。そこは、庶務のサポートをするという、初歩中の初歩の仕事。だいたいは、定年間近の事務職や、私たちのような“問題”を起こした人間が配属される場所だ。そう、いわゆる左遷場所だった。

「先輩、ご愁傷様です。私、ガッカリですよ。期待のホープの有坂さんを、左遷させるなんて」

周囲が、腫れ物を触るように私と有坂さんを無視しているなかで、亜沙美が嫌みたっぷりに声をかけてきた。荷物整理をしている私は、強く言い返す気力もない。

「私たち、なにもしてないから……」

それだけ言うのが精一杯で、異動先では必要のないマニュアル類を段ボールへ入れた。これはすべて廃棄分だ。

「なにもしてなくて、あんなビラが配られるんですか? 先輩って、おとなしそうに見えて、案外股が緩いタイプでしょ?」

耳元で囁くように言った亜沙美は、私を睨みつけてデスクへ戻った。なんで、そんな言い方をされないといけないんだろう。

そもそも、私と有坂さんは身体の関係なんてない。付き合ってさえいないのに、情事にふけるとか、思い出しただけでも腹だたしい。

でも、それを今言ったところで、まるで信用されないのだから、我慢しておこう。

Dismissed worker in office, bad news, fired

「よいしょ……」

段ボールを抱え、書庫室に向かう。その途中で紗羅と由依に会った。ふたりとも、冷ややかな視線を送ってくる。

彼女たちに声をかける元気もなく、黙って通りすぎたとき、背後からふたりの声がした。

「サイテー。真面目な顔して、陰でなにやってんだか」

「そうそう。騙された感じ」

ふたりの言葉に、じわりと涙が浮かんでくる。絶対に、私たちを陥れようとした人を、見つけ出してみせるから。

悔しくて唇を噛み締めながら書庫室を開けると、ちょうど有坂さんがいた。

彼も、整理をしている最中だった。

「向井、大丈夫か? オレが絶対に側にいるから」

苦しげな表情で声をかけてくれた有坂さんは、私から段ボールを受け取った。有坂さんがいて、緊張の糸が切れたのか、私は涙を止められなかった。

「どうして、こんなことになったんですかね。私、有坂さんの足を引っ張ったんでしょうか?」

涙を流す私を、有坂さんは優しく抱きしめる。突然のことに驚くとともに、そのぬくもりに甘えたかった。

「違う。オレがきっと、向井を巻き込んだんだ。だから、絶対にお前だけは守るから。きっと、誤解を解いてみせる」

そう言って有坂さんは、しばらく私を抱き締めていた。

文:花音莉亜