「女たちの戦場」第八話:犯人は誰?
Love 2017.03.15 UPDATE

「女たちの戦場」第八話:犯人は誰?

「部長、これはまったく身に覚えのないデタラメです」

有坂さんは部長に抗議するも、まったく相手にしてもらえない。社内が騒然とする中で、亜沙美たちだけは私を冷静に見ている。

いったい、誰がこんなことをしたの……?

思いを巡らせてもわからず、言葉を失う。

「とにかくふたりとも、こっちへ来てくれるか?話を聞きたい」

部長にそう言われ、私と有坂さんは奥にある応接室に移動した。

六畳ほどの応接室には、ガラステーブルと、黒色のソファーがあるだけだ。そこへ、私と有坂さんは並んで座った。

「本当に頭の痛い話だな。オレは、有坂にとくに目をかけていただけに残念だよ」

部長のため息混じりの口調に、有坂さんは身を乗り出すように言った。

「これは、誰かの嫌がらせです。僕と彼女が会社でこんなこと……」

有坂さんは、歯をくいしばるようにビラを憎々しげに見ている。

「しかしな、こういう噂が立つと、他の部下にも示しがつかない。申し訳ないが、お前たちの処分は、厳しいものだと思ってほしい」

「えっ⁉︎私たち、なにもしていないのに処分なんですか?」

そんな納得のいかないことってあるの?

それは有坂さんも同じで、「釈明の余地すらないんですか⁉︎」と抗議している。だけど、部長は首を横に振って、さっさと出ていった。

「どうして……」

部長に見捨てられたような気になりながら、肩を落とす。有坂さんは、私の肩を軽く叩いた。

「いったい、誰がなんのためにやったんだろうな……」

本当にそのとおりで、なんで私と有坂さんを標的にしたんだろう。仲を疑われることなんて、なにもしていないのに……。

「私に恨みでもある人がいるんですかね……」

膝に置いた手に拳を作り、目を伏せたまま呟くと、有坂さんがそっと手を重ねてくれた。温かくて、大きくて筋肉の締まった有坂さんの手だ。

驚いて顔を上げると、彼のぎこちないながらも優しい笑顔があった。

「そんなわけないだろ?向井はコツコツと仕事を頑張るタイプだし、野心もない。人の恨みを買うような人間じゃないよ。むしろ、問題があるならオレにだ。向井は巻き込まれただけだ」

「そんな……。そんなわけないです。有坂さんこそ、誠実な人なのに……」

だからこそ、全然納得ができない。いったい、誰がこんなことをして得することがあるんだろう。

「とにかく向井のことは、オレが守るから」

「有坂さん……」

その気持ちがうれしくて、涙がじわりと浮かんでくる。

これから、私たちはどうなるんだろう。私はいいけど、有坂さんだけは助けたい。誰よりも有能な将来性のある人なのに……。

気が重いまま応接室を出ると、片瀬さんに腕を引っ張られる。死角になる場所で、小声で声をかけてくれた。

「大丈夫だった?大変ね。向井さん、気をつけて。今回のことは、ふたりの仲を妬んだ人の仕業かもしれないから」

「え?私たちの……?」

真っ先に思い浮かんだのは、亜沙美だ。

少なくとも亜沙美は、私が有坂さんを好きだということを気づいてる……。

文:花音莉亜