「女たちの戦場」第七話:忍び寄る罠
Love 2017.03.15 UPDATE

「女たちの戦場」第七話:忍び寄る罠

亜沙美の挑発メールから、私が有坂さんを好きだと確信しているのがわかった。きっと彼女は、本気で彼を狙ってくるに違いない。いつもどこか私を見下していて、私より何歩も先を行きたがる人だから。

「どうかした、向井さん?ため息が深いわよ?」

昼休憩で、今日は亜沙美と顔を合わせたくなくて、会社の近くにある公園でひとりお弁当を広げていた。すると、コンビニの袋を持った片瀬さんに声をかけられた。

サンドイッチとコーヒーを買った片瀬さんは、私と同じように外で昼食を取ろうと思ったらしい。すると私を見つけて、声をかけたということだった。

「あ、片瀬さん。実は……」

恋愛のことは、信頼する片瀬さんにもなかなか言い出せないでいたけど、やっぱり話そう。仕事以外のことで、悩んでいるのを軽蔑されたくなかったからだけど、モヤモヤして苦しい今の気持ちから解放されたかった。

「なるほどね。向井さんが有坂くんを好きなのは気づいてたけど、心配は無用じゃない?」

片瀬さんは私の話を聞いたあと、ニコリと笑って言った。

「気づいてたんですか……?さすが片瀬さんです。でも、なんで心配ないと?」

驚きつつ、彼女の言葉を疑問に思った私は、それを尋ねていた。

「有坂くんも、きっと向井さんを好きだから。ただ、ライバルが多いわね。思い切って、自分の気持ちを表に出した方がいいかもしれない」

「え?でも、うちは社内恋愛に否定的です。有坂さんに迷惑がかかりませんか?」

だいたい、有坂さんが私を好きとは信じられない。

「そんなことはないわよ。それに有坂くん、次の人事で異動になるかもしれないし」

そうか、異動があるかもしれないんだ。

片瀬さんの言葉を聞いて、不安が広がっていく。そう考えたら、彼女の言うことも一理ある。

man in office on the telephone

そんな思いを巡らせながらなんの進展もなく数日過ぎた頃、先日訪問した安田さんから注文キャンセルの連絡がきて、有坂さんの怒号が響いた。

いつもは温厚な有坂さんの怒った様子に、さすがの亜沙美たちも黙って見ている。

電話を切ったところを見計らって、私は有坂さんに急いで駆け寄った。

「安田さん、どうしてキャンセルなんて……」

青ざめる私とは違って、有坂さんは顔を赤くしている。かなり興奮した様子で、私をチラッと見た。

「わからない。あんなに向井の商談を褒めてくれていたのに、突然、オレたちからの購入は見合わせたいって……」

「オレたちって、原因は私たちなんですか?」

どうしてなの?商品が気に入らないならまだしも、”私たちだから”イヤ?

まるで納得できない私は、しばらく絶句していた。

すると、ちょうど外回りから戻ってきた部長が、鬼の形相で私たちの側へやってきたのだった。

「有坂に向井、これはどういうことだ?」

部長が突き付けたA4サイズの紙には、パソコンの文字で

<商品企画課の有坂と向井は、終業後の社内で情事にふけっている>

と書かれていた。

文:花音莉亜