「女たちの戦場」第六話:秘めた想い
Love 2017.03.15 UPDATE

「女たちの戦場」第六話:秘めた想い

有坂さんと店に入ると、中は隠れ家的な落ち着いた雰囲気で、大人の店といった感じだった。客は20〜30代の女子グループやカップルが数組いる。

「オレのオススメはこれ」

有坂さんは、メニューにあるコース料理を指差した。

「お魚がメインなんですね。おいしそう……」

食前酒から始まり、デザート付きだ。彼のオススメを注文し、ふたりでディナーを堪能していると、有坂さんが言った。

「向井の営業力は成長したよな。最初の頃は、緊張して会話もおぼつかなかったけど」

「ありがとうございます。でもそれは、有坂さんのお陰だと思います」

私が新人だったときから、親身に相談に乗ってくれ、アドバイスをしてくれた。そんな有坂さんに、私は感謝の気持ちでいっぱいだった。

「そんなことはない。向井はいつも素直に話を聞くじゃないか。それが今に繋がってるんだ」

有坂さんは穏やかな口調で、そう言ってくれる。

「有坂さん、私もっと頑張りますから。これからも、よろしくお願いします」

素直にそう思い、彼に笑顔を向けた。そんな私に、有坂さんも笑みで応えてくれる。

こんなふうに会話をすればするほど、有坂さんを好きだという気持ちが増してきて苦しい。だけど、告白をする勇気は到底持てない。

もちろん、自信のなさもあるけれど、社内恋愛に否定的なうちの会社では、有坂さんに告白しても迷惑なだけ……。そんな思いもあって、彼への恋心は胸に秘めていた。

「向井、そろそろ出ようか。このあとどうする?」

ディナーも終わり店を出たところで、有坂さんにそう聞かれてドキッとする。まだ一緒にいられる……それだけでうれしいと思ったとき、有坂さんの携帯が鳴った。

「迫田からか……」

それは会社用の携帯で、どうやら亜沙美かららしい。なんでこんなタイミングで……と心の中でボヤいていると、話し終えた有坂さんが、申し訳なさそうに私を見た。

「ごめん、向井。迫田から、仕事のことでどうしても相談したいことがあるって言われて、行かないといけなくなった」

「え……?そうなんですか」

亜沙美が有坂さんに相談ってなんだろう。仕事で有坂さんとペアを組んでいるのは私だし、なにも彼に相談しなくてもいいのに。

じわじわと湧く嫉妬心を抑えて、有坂さんに笑顔を向けた。

「私のことは気にしないでください。また、明日よろしくお願いします」

すると有坂さんは、気まずそうに笑みを向けた。

「本当にごめんな。また明日……」

有坂さんは身を翻すと、足早に去っていった。

「はぁ……タイミング悪い」

ため息まじりに言って帰路につこうとしたとき、携帯にメールがきた。

それは亜沙美からで、≪有坂さんはいただきま~す。先輩には負けませんから≫と書かれていた。

「なにこれ……」

宣戦布告とも受け取れるメールに、私はしばらく呆然とした。

文:花音莉亜