「女たちの戦場」第四話:彼のタイプ
Love 2017.03.15 UPDATE

「女たちの戦場」第四話:彼のタイプ

「そうなの?」

と片瀬さんが言うと、有坂さんは頷いた。

「オレは逆に、少し不器用なくらいの女性が好きですね」

チラッと目を向けられ、恥ずかしさで目をそらす。別に、私を見たからって、私のことを言っているわけじゃない。それはわかっているのに、有坂さんと目が合うと胸が高鳴って緊張してしまう。

「あっ、来客対応があるんだったわ。そろそろ戻らなきゃ」

片瀬さんは腕時計で時間を確認すると、席を立つ。突然、ふたりきりになり、途端に鼓動が速くなる。休憩室には人がいるから、厳密にはふたりだけじゃない。でもこのテーブルには、有坂さんとふたりきり。それが、私を緊張でいっぱいにさせたのだった。

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「なあ、向井っていつも弁当だよな。ちゃんと手作りなんだ?」

有坂さんは、コンビニの袋からお弁当を取り出す。

「手作りってほどでもないんですよ。夕飯の残りを入れたり……。一人暮らしなので、ムダがないようにって」

苦笑いを向けながら、つくづく自分には女子力が足りないなと思う。夕飯の残りなんて……色気がない。それでも、有坂さんは笑顔で言ってくれた。

「そういうの最高だな。オレが食べたいのは、そういう弁当だから」

「え? 私のお弁当ですか……?」

正直、可愛さがあるものじゃない。彩りやバランスは考えているけど、由依のようなキャラ弁にも似た凝ったものではない。それなのに、有坂さんは穏やかな笑みを浮かべて私を見た。

「今度、作ってくれる?」

「は、はい……」

と返事をしたものの、有坂さんは冗談で言ったのかもしれない。ここは、あまり真剣に捉えないでおこう。

「それはそうとさ向井、午後からのアポなんだけど、予定より長引きそうなんだ。大丈夫か?」

お弁当を食べながら、有坂さんが言った。

「そうなんですか。でも、大丈夫です。とくに滞っている仕事もないですし、プライベートの予定もないので」

「それならよかった。ちょっと、次の新商品の件で、先方がかなり話を詰めたがっててさ」

「わかりました。上得意ですもんね。私も気合いが入ります」

午後からの訪問先は、うちの商品を贔屓にしてくれている得意先だ。有坂さんの業績アップも、この会社の売り上げが大きく占めている。だから、私も自然とやる気が湧いてきた。やっぱり好きな人の支えには、なりたいと思うから。

「向井が作ってくれたプレゼン資料も、オレはいいと思ってる。きっと、先方も気に入ってくれると思うんだ」

「ありがとうございます。有坂さんにそう言ってもらえると、本当に自信になります」

照れくささを隠しながら、有坂さんへ笑みを向ける。すると彼も、同じく笑顔を浮かべてくれた。

「オレも、ペアが向井でよかったと思ってる。本当に、助かってるよ」

そう言ってくれた有坂さんの言葉は、魔法のように私の胸を温かくしていった。