「女たちの戦場」最終話:新たな道へ
Love 2017.05.31 UPDATE

「女たちの戦場」最終話:新たな道へ

営業部は大騒ぎになっていて、私も有坂さんと向かった。ただ、それは野次馬根性からではなく、彼に「真相がわかるから」と言われたからだ。

オフィスでは、部長の奥さんが半狂乱で叫んでいた。

「片瀬っていう女性を出しなさいよ!」

どういうこと……?と思って私がア然としていると、有坂さんが私に呟いた。

「部長と片瀬さん、不倫してたんだよ。噂はキャッチしてたけど、本当だったんだな」

「知っていたんですか?」

「ああ……」

どうやら、有坂さんが同期の人から聞いた話は、部長と片瀬さんの不倫のことだったらしい。

ふたりのことは、少しずつ噂になり始めていたとか。それだけなら、私たちには関係のない話だ。けれど、自分たちの不倫から社員の目をそらすことを目的に、部長が私たちの噂を流したと、その翌日に知り愕然とした。

システム部にいる有坂さんの友人が、部長のパソコンからビラの作成履歴を発見し、上層部へ通報してくれた。

その行為に加えて今回の不倫の発覚で、部長と片瀬さんは会社から追及され、ふたりとも自主退職をした。

その後のことは風の噂でしか聞かないけれど、部長の奥さんと裁判沙汰になり、解決はできていないと聞いている。

ビラが撒かれたとき、片瀬さんが亜沙美たちを疑わしく言ったのも、カモフラージュに使ったとわかり、切なくなってくる。

Enjoying tea by the window

「信じていたのに……」

有坂さんのマンションで、ボソッと私が呟くと、彼は頭を優しく撫でてくれた。

「ショックだよな。まさか、部長と片瀬さんが犯人とは……。オレも信じたくはなかったけど」

「うん。そうだよね」

有坂さんだって、上司の裏切りに傷ついていることは同じだ。

だけど、いつまでも引きずっていても仕方がない。

私たちは心機一転、転職をすることにし、先日付けで退職をした。

亜沙美たちは、あんなに有坂さんを狙っていたのに、真相がわかったあとも、私たちとまともに口をきいてくれなかった。

「なあ、奈々子。正直、オレはこうなって良かったのかもって思ってるよ」

彼の意外な言葉に私はア然とした。

「どうして?仕事を辞めざるを得なくなったのに」

と言った私に、有坂さんは苦笑いをした。

「負け惜しみじゃないけど、本当に大事なことがわかった気がするよ。今までのオレは、正直出世も意識してた。だけど、人を見る目を養うことが先かな」

「それは私も。亜沙美たちの有坂さんへ対する手のひら返しは……やっぱり腹が立つ」

「ハハハ。そこに関しては、見る目があったと思うよ。奈々子と恋人同士になれたから」

苦笑する彼の肩に寄り添うように、私は静かに言った。

「私も。有坂さんがいれば、なんでも頑張れる気がする。転職、大変だろうけど、お互い支え合って頑張ろうね」

「ああ、もちろん。そして、きっと奈々子を幸せにする」

有坂さんに抱きしめられて、私はそっと目を閉じた。この幸せがあれば、これからの苦難だって乗り越えられる、そう思えるから。

亜沙美たちとは、もう連絡はとらない……。私たちは、本当の幸せをきっと見つけていくーー。

彼とふたりで。

Couple enjoying outdoors in a urban surroundings.

文:花音莉亜