「女たちの戦場」第十話:重なる想い
Love 2017.03.15 UPDATE

「女たちの戦場」第十話:重なる想い

異動先の部署でも、私と有坂さんは好奇の目にさらされた。どれだけ噂を否定しても、真実を誰も聞き入れてくれない。

「はぁ。なんでだろう。根拠のない噂は信じるのに……」

昼休憩も、人目をはばかるように空き会議室を使い、ひとりで過ごしている。ひとけのないフロアの、端の会議室で食べるお昼ご飯は、味なんてまるで感じられなかった。

有坂さん、気丈に振る舞っているけど、大丈夫かな……。

こんな状況でも、気になるのは彼のこと。期待のホープといわれた有坂さんが、出世街道から外れただけじゃなく、信頼すら失っている。それが、私には一番いたたまれなかった。

そんなことを悶々と考えていたとき、会議室のドアがノックされた。普段から、使われることがほとんどないのに、一体誰だろう。そう思っていると、ゆっくりとドアが開いて、有坂さんが入ってきた。

「向井、やっぱりいた。一緒にいいか?」

コンビニの袋を片手に、有坂さんが笑顔を見せた。そんな彼に、私もぎこちないながらも笑みを浮かべる。

「よくわかりましたね」

無理して、笑顔を作ってるんじゃないかな。それが心配になってくる。

「なんとなくわかるよ。向井のことは、ずっと見ていたつもりだから」

有坂さんは隣に座って、穏やかにそう話した。

「え?私のことをですか……?」

ドキッとしながら有坂さんを見ると、小さく頷かれた。

「ああ。ずっと見てた。後輩として仕事を応援していたし、それに……」

「それに?」

有坂さんは、そこから口をつぐんでいる。コンビニの袋は机に置いたまま、目を一度伏せたかと思うと、私を真っすぐ見据えた。

Man and woman sits at a desk with hands clasped.

「こんなときに、不謹慎だと思われるかもしれない。だけど、オレは向井を堂々と守りたいんだ」

「堂々と……?」

それはどういう意味なんだろうと、次の言葉を待っていると、有坂さんがひと呼吸おいて言った。

「向井、オレと付き合ってくれないか?」

「えっ?」

待って、それは告白……?

信じられない気持ちで言葉を失っていると、有坂さんは少し照れくさそうな顔をした。

「本当は、ずっと言いたかった。ようやく決心がついたよ。こうなって、向井を絶対に守りたいと思ったから」

「有坂さん……。うれしいです。私もずっと好きでした」

まさか、有坂さんから告白をしてもらえるなんて、想像もしていなかった。私だって、この状況になって心底思ったから。彼を守りたいと……。

「有坂さん、私も有坂さんの疑いを晴らしたいです。期待のホープだったのに……」

そう言うと、有坂さんは表情を強張らせた。さっきの穏やかな雰囲気とは、まるで対照的だ。

「そのことなんだけど、オレたちの噂を信じていない同僚もいる。そこから聞いた話なんだけど……。もしかしたら、犯人がわかるかもしれない」

「えっ?どういうことですか?」

思いがけない彼の言葉に、私は浮かれそうだった気持ちが一気に沈んでいった。

文:花音莉亜